回る

菅部享天楽

 

 いつも通りの朝だと思っていた。

 ところが、目覚めた場所は普段使っているベッドではなくて、布団の上だった。辺りを確認してみると、この部屋はそれなりに広い和室のようだった。十五畳以上はありそうだ。私の背丈よりも大きな箪笥が二つ、壁沿いに並べられており、他の誰かが眠っていたのか、枕や掛布団等が散乱している。

 私は見慣れない部屋に戸惑いを覚えたが、何故か懐かしい気分になっていた。一度ここに来たことがあるような気がしてならないのだ。とは言っても「ような気がする」だけであり、何も思い出すことはできなかった。

 私は起き上がり、部屋の外に出てみた。すると、これがまた珍妙で、廊下が一本あるだけなのである。目の前には玄関、そのすぐそばに小さなキッチンが見える。私は玄関まですたすた歩いて行った。その途中、キッチンを一瞥した。

 キッチンはごく普通のものだった。ただ、コンロがIHだった。そのIHの上にタオルが雑に掛けられていた。しかもIHには電源が入っている。

 私が電源を落とそうとしたとき、急にタオルが燃えだした。炎は信じられない速さで周辺を包み込んだ。勿論、私もそれに巻き込まれる……。

 

 

 

 目が覚めた。しかし、そこは布団の上。体を起こすと、目の前には箪笥が二つ佇んでいた。私は辺りを見渡し、周囲を確認した。先程と全く同じ風景だ。もしかしたらと思い、急いでキッチンに向かう。予想通り、コンロの上にタオルが置いてあり、火を消そうとすると一気に燃え出した。ここで意識が遠くなっていく。

 

 

 

 

 そして意識が戻った。また布団の上である。私は不安になった。もしかしたら、このまま同じ時間を過ごし続けるのではないかと、一生目が覚めないのではないかと。キッチンに向かうと案の定、火の手が上がり、布団の上に戻される。

 

 目を覚ます、火に飲まれる。

 目を覚ます、火に飲まれる。

 目を覚ます、火に飲まれる……。

 いつになったら本当の意味で目を覚ますのだろうか? ひょっとすると、これは現実なのだろうか? 実際、そう錯覚するほど、リアルであった。廊下はひんやりと冷たいが、火の近くに来ると、熱くなる。夢か現か、次第に分からなくなってきた。

 しかし、何度も体を燃やされて、懐かしさの理由に気が付いた。私が横になっているこの和室は、小学生の時に住んでいたマンションの一室に酷似している。そして、あのコンロは社会人になって一人暮らしをする際に買ったものだ。そして、部屋の作りは今住んでいる家と全く同じである。私は改めてここは私の記憶が作りだした夢の中だと実感すると同時に底知れない恐怖に襲われた。

 私は再びコンロの前に立ち、OFFのボタンを押そうとした。体が火に包まれる。

 

 

 

……

 

 

 

 目が覚めた。今度も布団の上である。異様に体が熱い。というより部屋全体が暑い。体を起こすと、目の前に学習デスクがある。その上には60センチくらい幅のある大きな水槽が置いてある。水槽の中は、自然の一部を切り取ったかのような、立派なアクアテラリウムだった。イモリがのんびりと泳いでいる。

「あ、享天楽が起きた」

 声のしたほうを見ると、そこには友人が自身の布団を畳んでいた。

「あ、おはよう……」

 

 何とか戻って来れたようだ。恐らく、悪夢の原因は友人宅に泊まって、枕が変わってしまったせいだろう。

 

......
 いつになったら本当の意味で目を覚ますのだろうか? ひょっとすると、これは現実な
のだろうか? 実際、そう錯覚するほど、リアルであった。廊下はひんやりと冷たいが、
火の近くに来ると、熱くなる。夢か現か、次第に分からなくなってきた。
 しかし、何度も体を燃やされて、懐かしさの理由に気が付いた。私が横になっているこ
の和室は、小学生の時に住んでいたマンションの一室に酷似している。そして、あのコン
ロは社会人になって一人暮らしをする際に買ったものだ。そして、部屋の作りは今住んで
いる家と全く同じである。私は改めてここは私の記憶が作りだした夢の中だと実感すると
同時に底知れない恐怖に襲われた。
 私は再びコンロの前に立ち、
OFF
のボタンを押そうとした。体が火に包まれる。
......
 目が覚めた。今度も布団の上である。異様に体が熱い。というより部屋全体が暑い。体
を起こすと、目の前に学習デスクがある。その上には
60
センチくらい幅のある大きな水
槽が置いてある。水槽の中は、自然の一部を切り取ったかのような、立派なアクア
テラ
ウム
だった。
イモ
リがのんびりと
いでいる。
「あ、享天楽が起きた」
のしたほうを見ると、そこには
人が自
の布団を畳んでいた。
「あ、おはよう 」
......
 何とか戻って来れたようだ。恐らく、
夢の
原因
まって、枕が
わってし
まった
いだろう。